研究1 パクリタキセルに対する耐性発現における転写因子YB-1の関与 (1)背景と目的 パクリタキセルは乳癌を含む様々な癌に対し広く使われているが、それに対する耐性が問題となっている。乳癌でのパクリタキセルに対する耐性に転写因子Y-box結合蛋白1(YB-1)がどのように関与しているのかを明らかにすることを目的とした。 (2)対象と方法 パクリタキセルによる治療前後の乳癌組織でのYB-1とP糖タンパク(Pgp)の発現と局在を免疫染色で解析し、パクリタキセルがYB-1の局在やMDR1プロモーターに及ぼす影響を、GFP-YB-1導入細胞、EMSA法、レポーターアッセイ法で解析した。 (3)結果と考察 パクリタキセル投与により乳癌で、YB-1の核への移行とPgpの発現増加とに有意な相関が認められ、パクリタキセルの臨床効果は、YB-1の核移行が認められない群で有意に高く認められた。また、in vitroでの解析で、パクリタキセル処理により乳癌細胞でYB-1の局在が細胞質から核に移行し、YB-1のMDR1プロモーターのY-boxへの結合の誘導とプロモーター活性の増加が誘導された。 (4)結論 YB-1は乳癌におけるパクリタキセル耐性の機序に関与していることが示された。 研究2 免疫組織化学染色法と抗癌剤感受性試験を用いた乳癌における抗癌剤感受性予測因子の解析 (1)目的 抗癌剤感受性試験と免疫組織染色法によるバイオマーカー発現解析とを組み合わせて、乳癌におけるより個別化した抗癌剤選択の指標を探索することを目的とした。 (2)対象と方法 手術時に採取した乳癌組織で抗癌剤感受性をHDRA法にて測定し、免疫組織染色法による13種のバイオマーカーの発現との相関を解析した。 (3)結果と考察 エピルビシンに対する感受性は、Ki67、p53、Bc12の組み合わせで、パクリタキセルについては、Ki67とTopo II αまたはKi67とPgpとの組み合わせで、5FUに関してKi67とBc12またはHer2とBc12との組み合わせで、感受性の層別が可能であった。 (4)結論 それぞれの抗癌剤の感受性と関連がある幾つかのバイオマーカーの発現を評価することで、抗癌剤に対する感受性を推測できる可能性が示唆された。
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