研究課題
基盤研究(C)
免疫抑制剤の不使用下に拒絶がおこらない状態、すなわち免疫寛容は患者にとって大変に好ましい。我々は本研究の開始に先立って、京都大学で肝移植後に免疫寛容の成立した患者の末梢血にIL-10産生性のγδT細胞のサブセットであるVδ1細胞が多く存在することを見出した。同細胞は、妊娠を継続させるために重要な役割を担っているらしい。免疫抑制剤を必要とせずとも胎児が母体に拒絶されない状態が自然に成立する妊娠という現象もまた、免疫寛容である。これらの事実から、我々は、肝移植の免疫寛容を説明するメカニズムはVδ1細胞の働きにあるとの仮説を立てた。その仮説を確かめるため、ヒトの肝移植と小腸移植の後に免疫寛容となった患者の移植臓器内に存在するVδ1細胞の性質を調べた。その結果、リアルタイムPCRにより肝移植の免疫寛容の移植肝のなかでもVδ1細胞のmRNAの増加が認められることがわかった。また、肝移植の免疫寛容の移植肝のなかで増加のVδ1細胞の認めるVδ1細胞の受容体の抗原認識部位の塩基配列を調べると、ある特定の塩基配列が特異的に増加していることが分かった(受容体の単一化)。ところが、肝移植後に拒絶反応で喪失した移植肝においては、Vδ1細胞の増加も、受容体の受容体の単一化も認めない。また、小腸移植の後に免疫寛容となつた移植小腸のなかでも、Vδ1細胞の増加、受容体の単一化は認めなかった。これらのことから、Vδ1細胞は肝臓に特異的な抗原を認識して、増加して肝臓の免疫寛容の成立に重要な働きをしていると考えられる。本研究の成果により、患者の肝組織を調べることで、Vδ1細胞を免疫寛容のマーカーとして利用し、免疫抑制剤の調節ができるだけではなく、対応抗原を同定精製すれば、Vδ1細胞を体内で増やして免疫寛容を成立させる画期的な薬剤「世界初の免疫寛容誘導剤」の開発にもつなげることができる可能性がある。
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Transplant Immunology 17
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