研究概要 |
効果増強のためにアポトーシス誘導関連遺伝子の導入、抗アポトーシス蛋白の抑制などによる研究開発が行われてきたが、抗癌剤の治療効果増強の結果は十分とはいえない。非アポトーシスの細胞死形態には、オートファジー、ネクローシス、mitotic catastrophe/senesenceなどが報告されているが、その臨床的意義は明らかでなかった。本研究結果では、1)胃癌・乳癌を対象とした固形がんに対して多くの抗癌剤でオートファジーの誘導が可能であること、2)アポトーシス誘導初期にはオートファジーはアポトーシス抑制に作用するが、後期では細胞死に作用する可能性があること、3)アポトーシス耐性腫瘍ではオートファジー誘導により効果増強が可能であること、4)アポトーシス/オートファジーの誘導は腫瘍免疫の活性化に寄与していることなどが示唆された。新規抗癌剤あるいは分子標的治療薬による治療効果の発展は、アポトーシス抵抗性細胞に対する非アポトーシス細胞死の誘導と腫瘍免疫賦活化に依拠していると考えられる。特に、trastuzumab, bevacizumabによる治療効果増強は、抗癌剤による細胞死誘導の修飾と同時に、FcγRを介したNK細胞,樹状細胞の活性化が大きく関与しており、CpG ODNsを含む腫瘍関連抗原の免疫複合体などのreceptor-mediated endocytosisによるリンパ系樹状細胞の活性化が重要と思われる。腫瘍の消退にはがん細胞の完全除去が必要であるが、固形がんでは抗癌剤のみによる除去は不可能であり、非がん細胞および腫瘍微小環境を考慮した腫瘍免疫の活性化が不可欠といえる。抗癌剤併用効果では、効果増強のrationaleの解析が重要であり、実地臨床におけるproof of principleの検証が求められている。
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