研究課題/領域番号 |
17591339
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
黒木 祥司 九州大学, 大学病院, 講師 (30215090)
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研究分担者 |
中村 雅史 九州大学, 大学院医学研究院, 助教授 (30372741)
森崎 隆 九州大学, 大学院医学研究院, 非常勤講師 (90291517)
久保 真 九州大学, 大学病院, 助手 (60403961)
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キーワード | 乳癌 / エキソゾーム / 遺伝子治療 / 機能分子 / 制御性T細胞 |
研究概要 |
昨年度は、乳癌治療への応用を視野に入れ、乳癌細胞の分泌するexosomeの生物学的機能を解析し、乳癌細胞がexosomeを分泌し、分泌されたexosome上にMHC classI、 Hsp70、HER2といった免疫療法へ応用可能な種々の分子群が発現しており、さらに、Her2陽性exosomeによる自己乳癌細胞増殖促進効果などexosome上分子が機能分子として働いている可能性が示された。 今年度は、培養細胞へHedgehog signal(われわれが乳癌細胞の治療標的としての可能性を報告した形態形成シグナル系:Kubo M, Kuroki S et al.Cancer Res 64:6071,2004)の受容体であるPatchedをexosome上に発現させる計画であったが、Patched発現乳癌の分泌するexosome上でのPatched発現は確認することができず、Patched cDNA含有プラスミド導入による操作によってもexosome上へのPatched発現は明らかではなかった。Exosome上にPatchedが発現しない理由は不明だが、本研究の基本的計画を遂行するために、乳癌細胞よりexosome分泌の盛んな単球由来樹状細胞を標的とし、これにHer2およびCEAの遺伝子導入を行い、exosome上でのHer2およびCEA発現の可能性を検討した。 その結果、本年度は以下の研究成果が得られた。 1)これら遺伝子導入により樹状細胞膜上への発現は極めて弱いにもかかわらず、exosomeでの発現強度は高いことがFACS解析より示唆された。すなわち、exosome上に特定の蛋白分子の発現を誘導しうる可能性が示され、現在、これら分子が抗原として、あるいはリガンド中和物質様の機能分子として応用可能かの検証に入っている。 2)また、癌性胸腹水中より分離したexosomeが制御性T細胞の細胞寿命を延長させるといった新たな機能を有する可能性を示唆するデータを得た。このことは、乳癌による癌性胸膜炎に対する免疫療法において胸水中exosome除去といった新たな治療法を開発しうる可能性を示唆している。 以上、本年度の当初計画である、exosomeへのPatched発現は成功しなかったが、遺伝子導入による任意蛋白のexosomeへの発現誘導の可能性と、制御性T細胞の細胞寿命延長作用という新たな生物学的機能が示唆された。
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