研究課題
基盤研究(C)
本研究の最終目標は、乳癌細胞の分泌するexosomeの生物学的機能を解析し、乳癌治療へ応用することである。成果をまとめると、乳癌細胞由来exosomeが1)乳癌細胞の増殖を促進すること、2)抗原となる種々の蛋白分子を発現していること、3)制御性T細胞の寿命を延長させる可能性などが判明した。さらに、4)樹状細胞に遺伝子導入することにより任意の蛋白をexosome上に発現しうる可能性が示された。以下に、本年度の成果の概要を記載する。1.乳癌細胞はexosomeを分泌し、MHC class I、HER2、Hsp70、Hsp90など免疫関連分子が高率に発現していることが判明した。2.乳癌細胞は、1%人アルブミン添加培養液あるいは血清無添加培養液中においてもexosomeを分泌する。したがって、治療用exosomeの調整は可能である。3.治療用exosome作成には抗HER2抗体結合ビーズによる精製法の有用性が確認された。4.癌性腹水中のexosomeが制御性T細胞に対する細胞寿命延長作用を有することが示唆された。5.HER2陽性乳癌分泌exosomeがHER2陰性乳癌細胞表面へ結合することが確認できたが、遺伝子導入によるexosome上へのHER2分子発現誘導は成功していない。6.HER2陽性乳癌分泌exosomeは、自己の乳癌細胞の増殖を促進した。これは、exosome上の分子が機能分子として働いていることが示唆するデータである。7.樹状細胞への遺伝子導入によりexosome上にCEAの発現を確認した。以上、exosomeの乳癌治療への応用の可能性を示唆する新たなデータが得られた。
すべて 2005
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