研究概要 |
本年度は、45例の胸腺組織におけるHedgehog(Hh)シグナル系解析を行い、26例についての解析結果を報告した(Anticancer Research 25:3697-3702,2005)。 本年度の研究によって得られた新たな結果を以下に記載する。 1.成人の正常胸腺におけるHhシグナル系解析の報告はほとんどないが、解析した26標本中、20標本に正常胸腺部が確認され、16正常胸腺(80%)でShhの発現を認めたが、Hh活性化を示唆するPtched1およびGli1の発現は確認されなかった。 2.正常胸腺組織とは異なり、胸腺腫(thmoma)においては、Shh発現はWHOの組織分類に逆相関を示した。すなわち、Shh陽性率は、A型(100%)、AB型(9.1.6%)、B1型(62,5%)、B2型(25%)、C型(0%)であり、Hhシグナル活性化の指標であるGli1の発現は、A型(100%)、AB型(36.4%)、B1型(75%)、B2型(25%)、C型(100%)であった。すなわち、正常組織に比べ胸腺腫においてはGli1発現が有意に高く(P<0.0001)、胸腺腫におけるHh活性化が示唆された。これは胸腺腫の発生あるいは進展にHhシグナル系の関与を示唆する初めてのデータである。 3.C型(胸腺癌)が1例しかなく、この1例ではGli1発現が非常に強いにも関わらず、Shhの発現がほとんど認められないことから、少なくとも本症例では、リガンド非依存性のHhシグナル活性化が示唆された(初めてのデータである)。 4.本年度の解析においては、26症例中20例が重症筋無力症症例であったが、重症筋無力症とHhシグナルとの間に有意の相関関係を見出すことはできなかった。 5.胸腺腫細胞株の樹立には未だ成功していない。
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