研究概要 |
昨年度は、26例の胸腺組織におけるHedgehogシグナル解析を行い、初めて胸腺腫におけるHedgehogシグナル系の活性化を明らかにした(Anticancer Res 25:3697,2005)。 しかし、本研究の主目的である重症筋無力症治療への応用に道を開くデータは得ることができなかった。 本年度は、次の2点について検討した。 1)昨年は、胸腺上皮細胞に焦点を当てて解析したが、今年度は26例の胸腺組織中のリンパ系細胞におけるHedgehogシグナル関連分子(Patched1,Smo, Gli1)の発現を免疫組織染色により詳細に検討・解析した。しかし、正常胸腺部においても胸腺腫においても、これら関連分子の発現に一定の傾向は認められず,胸腺腫や胸腺癌におけるHedgehogシグナル系の活性化は、昨年の結論同様、リガンド非依存性の活性化(例えば、Patched遺伝子の変異など)の可能性が示唆された。 2)治療法への応用を探るために、胸腺細胞および胸腺腫細胞の培養を試みたが、胸腺腫手術症例の減少もあり、本年度も細胞株の樹立は成功しなかった。 結論として、本年度は胸腺腫特に重症筋無力症への治療開発に貢献しうる新たなデータを得ることができなかった。しかし、胸腺腫におけるHedgehogシグナル系の活性化は、本研究を通して初めて明らかになった貴重なデータであり、本研究は継続中である。
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