研究概要 |
1)甲状腺未分化癌細胞株でのDNAメチル化の検討を行った。OCUT-1,OCUT-2、ACT-1,KTC-1,TTA-1ではいずれもp16遺伝子のメチル化が認められた。他の遺伝子(hMLH1,DAP-kinase,E-Cad herin)のプロモーターCpG islandにおいても高頻度にメチル化が認められた。臨床検体を用いた実験では、マイクロダイセクションによる遺伝子DNAの抽出が予想に反して不安定であり、結果を出すことができなかった。手術後の標本の固定状態に難があるためと考えられ、この部分の計画を断念した。少数の新鮮標本より抽出したDNAでは異常なメチル化を観察し得なかった。以上の結果は、本研究の助成決定後に発表された論文(Schagdarsurengin U, et al. Thyroid 2006)の内容とよく一致していた。 2)脱メチル化処理によって、各々の細胞株でのサイログロブリンmRNAの発現をRT-PCR法で検討することを目的として細胞株を脱メチル化処理した後、mRNAを抽出してcDNAを作成した。サイログロブリンに特異的なプライマーを用いてmRNAの発現を検討したところ、mRNAの発現状態に変化は認められなかった。さらに、甲状腺の分化に関わるTTF-1,-2,PAX8のmRNAについても検討を行ったが、明らかな発現状態の変化を観察し得なかった。 3)培養液中に脱メチル化剤を添加した際の細胞増殖の変化をMTT法を用いた細胞のviabilityから検討した。同時に、形態の変化を観察し、脱メチル化剤添加による増殖抑制が確認された。しかしながら、分化度の変化と思われるような形態学的変化を認めることはできなかった。 4)脱メチル化処理によって、各々の細胞株でのテロメラーゼの発現をTRAP法で検討することを目的として細胞株を脱メチル化処理した後、検討を行った。上述の増殖抑制に伴う変化があったものの、直接に発現を抑制していると思われるような大きな変化を認めなかった。 以上の他、現在OCUT-3、4の樹立と細胞学的性質の解析を進めている。現在まで、継代は約15代を経て細胞の成育は続いている。
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