研究課題/領域番号 |
17591343
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研究機関 | 香川県立保健医療大学 |
研究代表者 |
加藤 亮二 香川県立保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (00233833)
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研究分担者 |
上野 一郎 香川県立保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (30382394)
天川 雅夫 香川県立保健医療大学, 保健医療学部, 助手 (80331867)
亀子 文子 信州大学, 医学部保健学科, 助手 (60126670)
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キーワード | 甲状腺濾胞がん / 糖鎖 / 診断法 / レクチン |
研究概要 |
我々は甲状腺がん細胞が産生するサイログロブリン(Tg)分子内の糖鎖変異に着目し、糖鎖を認識するレクチンと抗Tgモノクローナル抗体を作成後、Tgの糖鎖変異を反映するレクチン阻害イムノアッセイ測定系を組立て、濾胞がんと濾胞腺腫の鑑別が可能な新しい甲状腺がん診断法を構築し、さらに、その方法が日常業務に応用可能かを血清および細胞診時に得られた穿刺液サンプルとして確認した。測定方法は甲状腺がん組織から精製したTgを免疫原とした認識部位の異なる抗Tgモノクローナル抗体を固相と酵素標識物に用いて測定系を組み立てた。操作方法は血清または予め希釈した穿刺液を反応後、洗浄し、LCAレクチンおよび標識抗Tgモノクローナル抗体を反応させ、LCAレクチンが反応したTg濃度を総Tg濃度に対する比率として求めLectin reactive Tg(LCA-Tg%)として表した。血清サンプルは良性疾患(バセドウ病)39例、良性腫瘍66例、甲状腺がん(乳頭がん66例、濾胞がん5例)および穿刺液サンプルは良性腫瘍69例、甲状腺乳頭がん6例である。血清総Tg値の分析では甲状腺がんと良性腫瘍では全く鑑別は不可能であったが、LCA-Tg%でカットオフ値81.8%を用いると甲状腺乳頭がん75.3%、濾胞がん80%、良性腫瘍20%が陽性を示した。甲状腺がんの腫瘍径1cm未満でも50%、3cm以上では85%が陽性を示した。リンパ節の転移の有無については差がなかった。また、同様に穿刺液では良性腫瘍の陽性率が10.1%、甲状腺乳頭がんで83.3%であった。良性腫瘍69例中2例にLCA-Tg%が異常値を示すものがあったが、細胞診の結果はそれぞれクラスIIIとIIであった。細胞診の結果をクラス別に平均LCA-Tg%を求めるとクラスIIIからLCA-Tg%は陽性となる傾向を示した。 今回の化学分析法を用いた新しい方法では甲状腺がんの診断が可能であった。穿刺液内サンプルは血清と同様にTg糖鎖変異が生じていると考えられ、本測定法は血清および穿刺液のいずれのサンプルでも良性腫瘍と甲状腺がんの鑑別診断に応用が可能であること示唆された。現在、濾胞がんと濾胞腺腫の症例を増加し測定を更に行う計画である。
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