研究概要 |
サイトメガロウイルス(CMV)特異的メモリーTを用いたCMV感染症の免疫療法の確立に向け、平成17年度は以下の研究を行った(番号は交付申請書の平成17年度研究計画に対応)。 1.CMV特異的エフェクターメモリーT細胞の認識エピトープ、表面マーカー:マウスCMV(MCMV)の抗原エピトープとして報告されている7つのペプチドのうちM123を認識するMHC/multimerを作成し、MCMV感染6〜12ヶ月後の肺でのメモリーT細胞を調べたところメモリーT細胞の殆どがこの抗原ペプチドを認識しており、CD69(活性化マーカー)、CD44(メモリーマーカー)を表面に発現していることがわかった。 2.CMV特異的メモリーT細胞の産生・維持・増殖におけるサイトカインの役割:従来、メモリーT細胞の維持・増殖にはIL-2,IL-7,IL15が関与していることが報告されている。一方、我々はMCMV感染SPFマウス肺では全リンパ球のうち約10%がM123を認識するMCMV特異的メモリーT細胞であるのに、MCMV感染無菌マウスではその頻度は1%以下であることを観察した。そこで、今回、本研究で新たに確立したリアルタイムRNA-PCR法にてMCMV感染SPFマウスと無菌マウスのIL-2,IL-7,IL15のmRNAの発現レベルを比較したところ、非感染マウスに比べると発現量は著しく多いものの、両マウス間には全く差が認められなかった。従って、メモリーT細胞の維持・増殖にはIL-2,IL-7,IL15等のサイトカインのみならず、常在細菌叢が大きく関与しているものと考え、メモリーT細胞が認識する抗原エピトープと常在細菌由来抗原とのcross-reactivityがメモリーT細胞の維持に重要であると考えた。 3.免疫療法に十分な量のメモリーT細胞を得る方法の確立:マウス脾臓よりanti-CD11c-magnetic beadsによりCD11c陽性樹状細胞を得ることが出来た。MCMV感染6ヶ月目の肺よりmultimer陽性メモリーT細胞をsortingにより採取し、このCD11c陽性樹状細胞と共培養を現在行っており、メモリーT細胞をin vitroで大量に得る方法を現在研究中である。 4.養子免疫療法に必要な移入細胞数の決定:我々はMCMV感染細胞上に発現しているMCMV特異的タンパクm157を認識するキメラCD8細胞株を作成した。これを用いた予備実験の結果、養子免疫療法に必要な移入細胞数は1x10^6/headとした。 1、2の結果は現在論文投稿中である。3、4、の実験結果を基に平成18年度の研究を行う。
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