研究課題/領域番号 |
17591350
|
研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
筒井 英光 東京医科大学, 医学部, 講師 (50328233)
|
研究分担者 |
臼田 実男 東京医科大学, 医学部, 助手 (60338803)
山田 公人 東京医科大学, 医学部, 講師 (10349475)
加藤 治文 東京医科大学, 医学部, 教授 (20074768)
|
キーワード | 甲状腺 / レーザー / 組織内 / 温度 / 壊死 |
研究概要 |
ヒト摘出甲状腺とブタ正常甲状腺に対し、波長830nmの光を発振するダイオードレーザーを用いた組織内照射を行い、甲状腺実質内に形成される壊死の大きさ(平均壊死直径)と周囲の温度上昇、組織学的変化を検討した。 (1)ヒト摘出甲状腺 バセドウ病甲状腺腫患者から摘出した正常甲状腺組織に対し、出力2W、3W,5W、総照射量500〜1500Jの照射を行ったが、照射条件と壊死の大きさに再現性がなかった。ファイバー先端部から5mmの点に熱伝対を刺入して、レーザー照射中の紺織内温度を計測したところ、最高温度は出力5Wにおける49℃であった。摘出後の時間経過により、組織内酸化ヘモグロビンの減少に伴って甲状腺実質の色調が赤褐色から白色調に変化したため、レーザー光が十分に吸収されず、再現性のある壊死を形成できなかったと考えられた。 (2)ブタ正常甲状腺に対する組織内レーザー照射 出力を2W、3W、5W、総照射最を250J、500J、1000J、1500Jとして実験を行った。2Wでは再現性のある壊死は形成されなかった。一方、3Wおよび5Wでは総照射最に比例して壊死の大きさは増大した。平均壊死直径の最大値は12mm(3w・300秒)であった。総照射量一定の下では、3Wの照射が5Wよりも大きな壊死を形成しる傾向にあった。レーザー照射時間と壊死の大きさを検討したところ、3W、5Wいずれの出力でも照射時間が同一であれば、壊死の大きさの差はなかった。組織内レーザー照射により形成される壊死の大きさは、一定の組織内温度に達すると、出力には依存せず、治療時間に影響すると考えられた。熱電対でファイバー先端部より5mm点の組織内温度を測定すると、3W、5Wでそれぞれ50℃、60℃で温度が一定した。先端部より2cmの部位では組織内温度の変化は認めなかった。サーモグラフィーで甲状腺表面の温度を測定したところ、3Wの照射で最高温度は40℃であった。組織学的検討では、照射部の濾胞上皮と間質の結合組織に融解壊死を認め、濾胞構造の破壊を認めた。破壊の程度はファイバー先端部に近いほど著明であり、正常部位との境界はやや不明瞭であった。 【結語】ダイオードレーザー(830nm)を使用したブタ正常甲状腺組織内照射においては、先端部出力3〜5W、照射時間300秒でファイバー先端部から末梢方向に平均直径10mm以上の紡錘形の壊死を形成した。出力に依らず、照射時間の延長により壊死の大きさは12mmまで増大した。レーザー出力を3Wに抑えることにより、甲状腺表面の温度は40℃までの上昇であった。径1cmまでの甲状腺結節に対しては、本照射条件により焼灼可能であることが示唆された。
|