研究概要 |
ヒト由来有機能肝細胞株(FLC)の増殖速度はヒト分離胆道上皮細胞(BEC)の約3倍で、正常ヒト肝臓での肝細胞数に対する胆道上皮細胞数はおよそ3〜5%であることから培養1週間目でのFLCとBECの細胞比率も正常ヒト肝臓と同様になるように細胞比率(FLC:BEC)6:1でカルチャープレートに蒔いて、継時的にBECの再生を位相差顕微鏡で観察した。培養開始後数日はFLCの増殖が目立ち顕微鏡視野のほとんどをFLCの細胞塊が占めた。BECは集束して敷石状の塊を徐々に形成しながら先に広範囲に細胞数を増したFLCの塊を圧迫するように成長した。BECの各細胞からは細い突起を出して隣接する細胞と連結しているように観察された。ほぼ1週間で細胞はコンフルエントとなった。その後第3週目まではほとんど形態学的な変化を認めなかったが、第4週目になるとFLC,BEC共にviabilityが低下し、5週目以降は形態学的観察を継続することは困難であった。長期間の形態学的観察が困難である原因は、培養スペースの大きさが一定であるため細胞数を増やし続ける2種類の細胞株の共培養では空間的限界が生じることが主要な原因と考えられた。この空間的な問題を解消するために培養をカルチャープレートからマウスに変更してBECの再生を検討した。ヌードマウスの投与部位は皮下、腹腔内と脾臓内で、まずはBECのみを培養液内またはコラーゲンゲル内に封入して各臓器に5X10^5個/body注入した。1ヵ月後マウスを犠牲死させ各臓器を摘出した。摘出時の肉眼的観察では皮下・腹腔内に細胞塊の形成などの所見は認めなかった。ただし脾臓内にBECまたはコラーゲンゲルを接種した群は、コントロールの脾臓と比較して軽度脾腫を認めた。現在、摘出した各臓器をHE染色による光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡で形態学的検討を行なっている。
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