研究概要 |
ヌードマウスの皮下、腹腔内と脾臓内にヒト分離胆道上皮細胞(BEC)を培養液またはコラーゲンゲル内に封入して各臓器に5×10^5個/bodyずつ接種する実験を行なった。1カ月後マウスを犠牲死させ各臓器を摘出した。摘出時の肉眼的観察では皮下・腹腔内に細胞塊の形成などの所見は認めなかった。しかし脾臓内にBECまたはコラーゲン・ゲル接種群は、コントロールと比較して軽度脾腫を認めたことを平成18年度に報告した。 平成19年度はこの摘出臓器の光学顕微鏡(光顕)による形態学的検討を行なった。皮下と腹腔内BEC接種群では投与部位にBECの増殖を示す所見はなく、BECの痕跡も認めなかった。一方、BECの脾臓内接種群の一部では、脾臓内に円形の紡錘形細胞塊を認めBECの脾臓内増殖の可能性を示唆した。走査型電子顕微鏡(走査電顕)での検討では、皮下と腹腔内投与群ではBECの所在が不明であり、脾臓内接種群では視野の大部分が脾構築内に充満する赤血球が観察されるのみでBECの同定に至らなかった。いずれの群においても有意なBECの増殖・再生の所見を得るには至らなかったが、1)1ケ月という観察期間が短い可能性2)腹腔内接種では、BECが散逸してしまい細胞塊の形成に至らなかった可能性3)脾臓内のBECの評価には赤血球の除去が必要、が反省点として挙げられた。この反省点を踏まえて次のような追加実験を行なった。改善点は、1)実験群の観察期間を延長し1ケ,月、2ケ月、3ケ月の3群にする。2)腹腔内投与に関しては腹膜直下局所に膨隆疹を形成するようにBECを接種する。3)脾臓内の血液を排除するためにマウスを犠牲死させる前に心室内に穿刺して生理食塩水で灌流し十分に潟血する。である。現在、1・2・3ケ,月経過したところで順次、各臓器の摘出を行なっている。今後HE染色による光顕と走査電顕での形態学的検討を予定している。
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