研究概要 |
ヌードマウスの皮下、腹膜と脾臓内にヒト分離胆道上皮細胞(BEC)をPBS溶液またはコラーゲン・ゲル(CG)内に混在させ各臓器に5×10^5個/bodyずつ接種後、1・2・3ヶ月経過したところでマウスを犠牲死させてBECを接種した各臓器を摘出した。BECを接種した皮膚(皮下)、腹膜を光学顕微鏡で観察したが1〜3ヶ月の何れの時期においてもBECの増殖を示す所見はなく、BECの痕跡も観察されなかった。またBECを脾臓内に接種した群ではBECとCGを一緒に接種した群において1ヶ月目に摘出した脾臓内でBECの円形の紡錘形細胞塊を認めた。しかしこれらのBECの細胞塊は2,3ケ月と接種観察期間を延長してもBECの細胞塊の増大や胆管様構造を形成する所見は得られなかった。BECをPBSと一緒に接種した場合でも1ヶ月目の脾臓内にBECの細胞塊は観察されたがBEC+CGの細胞塊と比較するとその大きさは小さかった。光学顕微鏡でBECの細胞塊が観察された脾臓の割面を走査電子顕微鏡で検討した。平成18年に施行した予備実験の経験から脾臓摘出前に左心耳を切開し体内循環血液を十分に洗いだしてから灌流固定したが、これらの処置を行なっても脾臓内赤血球の排除は十分ではなくさらなる工夫が必要と考えられた。走査電子顕微鏡での検討では、脾臓内に明らかなBECの細胞塊や胆管様管腔構造は観察されなかった。 胆管損傷時の修復機序を解明する実験は、プラスチックシャーレ上に敷いたCG上にBECをconfluentにした状況で、CGの一部にのせたカバーカラスを除去し胆管欠損部を設定した実験系である。これまでCG上においたカバーグラスがゲルの上を滑るため安定したBECの欠損部分を作成することに難渋した。CGの硬度を上げることでCGとカバーグラスとのスリップが抑制できることが判明したため報告書作成までに本実験の結果を導きたい。
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