テロメレース活性の高い癌細胞では、そのプロモーター活性も高いことが知られている。癌細胞が持つ自らの高いテロメレース・プロモーター活性により、癌細胞に自殺遺伝子を強発現させるベクターを作製した。自殺遺伝子としては単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)組み換え遺伝子の他に、Galエピトープを発現させるα1-3ガラクトシルトランスフェラーゼ(α1-3GT)組み換え遺伝子を作製した。 1.α1-3GT発現ベクターの作製 ヒトやサル以外の細胞表面には異種抗原としてaGal抗原が存在する。ヒトではこれを合成する糖転移酵素であるα1-3転移酵素(α1-3GT)が偽遺伝子となっており、αGalが発現していない。代わりにヒト血清中にはαGal抗原に対する自然抗体が存在し、その割合は全免疫グロブリンの1%を占める。異種移植では血液再潅流直後にαGal抗原とヒト血中の自然抗体が結合し、補体の活性化による細胞傷害と超急性拒絶反応が起こる。すなわち癌細胞特異的に超急性拒絶反応を誘導するようなベクターを作製した。 (1)ウシα1-3GTcDNAとテロメレースプロモーター遺伝子を連結させたベクターをクローンテック社のPEGFP1ベクターで作製した。 (2)エレクトロポレーションないしカチオン脂質を使い、各種癌細胞株に遺伝子導入後、G418を使い安定した遺伝子導入細胞を選択した。 (3)遺伝子導入細胞をヒト血清を含む培地に移し替え、細胞傷害活性をPI/Annexin V-FITCで染色してアポトーシス細胞の割合をフローサイトメーターで測定し、確実に自殺遺伝子が癌細胞中で作用することを確認した。 2.動物実験での確認 単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)組み換え遺伝子を安定して発現する細胞株を樹立後ヌードマウスに移植。腫瘍が成着後、ガンシクロビル投与により自爆遺伝子の効果を検討した。
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