研究課題/領域番号 |
17591360
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
柴田 雅朗 大阪医科大学, 医学部, 助教授 (10319543)
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研究分担者 |
森本 純司 大阪医科大学, 医学部, 講師 (90145889)
伊藤 裕子 大阪医科大学, 医学部, 講師 (40148432)
大槻 勝紀 大阪医科大学, 医学部, 教授 (50140166)
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キーワード | siRNA / VEGF-C / VEGF-A / リンパ行性転移 / 血行性転移 / 乳癌 / 転移 / マウス |
研究概要 |
【In vitro study】リンパ管新生に関わるVEGF-C mRNAに対するsiRNA配列の選定をInvivoGen社のアルゴリズムにより,3種のsiRNAを合成し、psiRNA-7SKGFPzeoベクターにそれぞれ挿入した(psiRNA-VEGF-C1,-C2および-C3)。なお、対照用のベクターとしてscramble配列を有したpsiRNA-SCRを用いた。3種のpsiRNA-VEGF-Cベクターをそれぞれマウス乳癌細胞BJMC3879に遺伝子導入した結果、遺伝子導入の48時間後において、psiRNA-VEGF-C1を導入した細胞で、VEGF-Cの相対発現量は、対照群と比較して、80%以上のノックダウンを示し、psiRNA-VEGF-C1の配列の有効性が示された。 【In vivo study】予備実験:まず初めにBJMC3879乳癌細胞を樹立した同系のBALB/cマウス雌に移植し、腫瘍径が約0.5cm大になった時点で、ルシフェラーゼ遺伝子を腫瘍中に50μg注入し、electrogene transfer (electroporation)いた。導入条件を1パルスで20msecで8回繰り返すようにセットし、13〜125voltの条件で、至適導入条件を検討した。その結果、100voltで導入効率が高かった。本実験:予備実験と同様にBJMC3879乳癌細胞をBALB/cマウス雌に移植し、腫瘍径が約0.2〜0.3cm大になった時点で、週1回の割合で腫瘍内にベクターであるpsiRNA-VEGF-C1、psiRNA-VEGF-Aまたは両者を混合して注入し、直ちに至適条件下でelectrogene transferを行い、実験終了の8週まで実施した。その結果、経時的な腫瘍体積ではpsiRNA-VEGF-C、psiRNA-VEGF-Aおよび複合治療群で抑制が観察された。リンパ節転移では、全ての治療群で有意な抑制が観察されたが、肺転移では複合治療群においてのみ有意な抑制が示された。腫瘍組織のリンパ管内にしばしば癌細胞が浸潤をしており、定量解析では全ての治療群でその数は有意に抑制されていた。 以上、高転移性マウス乳癌モデルにおいて、VEGF-CおよびVEGF-Aに対するsiRNAはリンパ節転移の強い抑制作用を発揮した。興味深いことにVEGF-Aに対するsiRNAにおいてもリンパ節転移を抑制した事実は、VEGF-Aが血管新生のみならず、リンパ管とも関わりを持つことが示唆された。なお、肺転移では、VEGF-CおよびVEGF-Aに対するsiRNAは効果が弱く、複合投与群においてのみ、抑制が示された。
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