研究課題/領域番号 |
17591363
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
中野 昌彦 福岡大学, 医学部, 助手 (90389354)
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研究分担者 |
安波 洋一 福岡大学, 医学部, 助教授 (00166521)
小野 順子 福岡大学, 医学部, 教授 (40108692)
波部 重久 福岡大学, 医学部, 講師 (70037430)
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キーワード | 膵島移植 / 糖尿病 / 活性化プロテインC / 組織因子 / グラフト傷害 / 炎症性サイトカイン / 凝固系 |
研究概要 |
単離膵島を経門脈的肝内に移植すると、速やかに膵島周囲に炎症が惹起され血栓が形成される(IBMIR ; instant blood-mediated inflammatory reaction)。これが移植早期の膵島傷害に関与していることが報告されている。本研究では、抗炎症作用と抗凝固作用を併せ持つ活性化プロテインC(APC)投与によって、移植後早期の膵島傷害が抑制できるかを検討した。マウスの同種同系肝内膵島移植のモデルにおいて、対照群ではストレプトゾトシン(STZ)糖尿病マウスに単離膵島200個を移植しても全例高血糖のまま推移したが、移植後早期にAPCをレシピエントに投与すると、全例で正常血糖となった。APC投与群のレシピエントの肝内には、対照群と比較して明らかに多くの膵島が生着していた。組織学的検索では、対照群では移植された膵島に浸潤してきた単核球に組織因子(TF)が発現していたが、APC投与群では抑制されていた。最近、我々は移植後早期のグラフトの障害にはNKT細胞に刺激されたGr-1陽性CD11b陽性単核球からのIFN-γが重要であることを報告した(J Exp Med.2005;202:913-8)が、本研究のFACSによる肝内単核球の解析では、APCは肝内膵島移植後のGr-1陽性CD11b陽性単核球からのIFN-γとTNF-αの産生を著明に抑制した。更に、このAPCの血糖改善効果は同種異系移植においても認められた。以上より、APCがTFの発現を契機とするIBMIRを抑制し、かつ、移植後早期の浸潤単核球による炎症性サイトカインの産生を抑制したため、APC群では膵島傷害が軽減されて、レシピエントの血糖改善につながったと思われる。 本研究の内容は2005年アメリカ移植学会(シカゴ、米国)、2006年日本外科学会(東京)に採択された。
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