研究概要 |
【背景と日的】黄疸を特徴とする肝再生時肝不全の病態を明らかにするため、ラット肝切除後肝再生時遺伝子発現推移をマイクロアレイを用いて網羅的に解析した。さらにATP binding cassette transporterの発現に焦点を絞って高サイトカイン血症の肝再生への影響についても検討を試みた。 【方法】1)ラット90%肝切除後0、24、72、168時間の各点で肝組織を採取、The GeneChip Rat Genome230 2.0(Affiymetrix)、RP-PCRを用いて解析した。2)さらにラット70%肝切除にLPS負荷を加え、ATP binding cassette transportersについてRT-PCRで検討した。3)また、関連実験として血液交換排液浄化循環透析モデルによる肝不全時機能解析を行った。 【結果】1)マイクロアレイの結果4,722個の遺伝子が1点以上の点で2倍以上の発現変動を示し、既知1587遺伝子については相同19パターンに分類された。機能別遺伝子発現パターンは従来の報告と一致し、肝再生モデルとしては的確であると判定された。ATP binding cassette transportersに焦点を絞ると、肝細胞取り込み型蛋白(OATP,2,4,NTCP)遺伝子(は24時間で著明に発現低下したのに対して、排泄型膜蛋白(MRP1,2,3,4,5,6)遺伝子ではMRP2が著明にdown-regulateされ、MRP1,3はup-regulationを示した。RT-PCRの結果も同様であった。2)肝再生時にLPSを負荷した場合、これらの変化は相加的に生じること確認された。 【結論】マイクロアレイによる肝不全の病態パターン診断の有用性が示唆された。肝再生と感染(LPS負荷)は、ともにMRP2 down-regulationを誘発すること肝不全を呈することが判明した。
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