研究概要 |
本研究の目的は緑茶カテキンによる食道および頭頚部領域の癌化学予防効果の検討と,同領域の前癌病変(異形成粘膜)への影響を見ようとするものである.早期食道癌の内視鏡治療施行後例のうち,多発する径5mm以下のヨード不染/淡染粘膜を有す例において,緑茶カテキン服用による癌局所再発,食道内新病変・頭頚部領域癌発生などへの影響を観察するため,対象例に緑茶カテキンを継続投与し,定期的な内視鏡によるサーベイランスを行ってきたが,平成19年度は投与を終了しての経過観察とした.それとともに,同時期の他の内視鏡治療例(非投与群)においても定期的な観察を行い,粘膜所見の変化などを調査した. 内視鏡検査所見は診療録と本研究登録例用の記録用紙に逐次記入した.検査の頻度は原疾患の状況に基づくものとし(通常は3-6カ月毎に検査),最低6カ月に1度の内視鏡検査を行い,咽喉頭,食道,および胃・十二指腸の観察を行った後,必要な組織の採取を行った.頭頚部,食道領域における新病変(癌および異形成粘膜)の出現をチェックするとともに,他臓器の癌発生にも留意し,癌が新たに生じた例では緑茶カテキンの投与を中断,適切な治療を実施した. 現在までの検討では,緑茶カテキンの服用コンプライアンスは良好で,投与群では非投与群に比較して食道内異時多発癌の頻度は低い傾向を認めているが,異形成粘膜の退縮など,癌への直接的な影響を示唆する変化はみられていない.また,投与開始早々での異時多発性二次癌の出現や,緑茶カテキン投与終了後の二次癌出現が見られており,それらの分析により一定の成果が期待される. 本検討の評価にはより長期の観察が必要であり,今後も当初の計画通り試験を続行する.
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