研究概要 |
癌の一次予防の重要性が広く認識され,様々なアプローチにより研究が続けられている.本研究もその一つで,緑茶カテキンによる食道および頭頚部領域の癌化学予防の可能性を検証するものである. 対象を早期食道癌の内視鏡治療施行後例のうち,多発する径5mm以下のヨード不染/淡染粘膜(前癌病変ないし微小癌)を有す例(投与例)とし,緑茶カテキン服用による癌局所再発率,食道内新病変・頭頚部領域癌発生率などの変化を有効性の指標とした. 計17例を対象として緑茶カテキンを継続投与し,定期的な内視鏡によるサーベイランスを行ってきた.検査の頻度は原疾患の状況に基づくものとし(通常は3-6カ月毎に検査),咽喉頭,食道,および胃・十二指腸の観察を行った後,必要な組織の採取を行った.内視鏡検査所見は診療録と本研究登録例用の記録用紙に逐次記入した.頭頚部,食道領域における新病変(癌および異形成粘膜)の出現をチェックするとともに,他臓器の癌発生にも留意し,癌が新たに生じた例では緑茶カテキンの投与を中止し,適切な治療を実施した. 現在までの検討では,緑茶カテキンの服用コンプライアンスは良好で,投与群では非投与群に比較して食道内異時多発癌の頻度は低い傾向を認めているが,ヨード不染粘膜の退縮など,癌への直接的な影響を示唆する変化はみられていない.また,投与開始早々での異時多発性二次癌の出現や,緑茶カテキン投与終了後の二次癌出現が見られており,同時期の非投与例と比較しつつそれらを分析することにより一定の成果が期待される.今後さらに2,3年の経過観察を行い,最終的な評価と結果の公表を行う予定である.
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