研究課題
我々は、現在の最大耐用量に基づく投与量設定法において、tumor dormancy therapyの概念および遺伝子薬理学知見から、継続性と個別化の2点を改善した、individualized maximum repeatable dose (iMRD:個別化最大継続可能量)法を開発した。このiMRD法による臨床試験を複数の癌で企画、推進してきた。iMRD法は、換言すればtailored doseであり、その目的は従来の「一定量」から「一定の血中濃度」にすることである。昨年度は、胃癌に対するweekly paclitaxelのiMRDとスターティングドーズでの血中濃度、AUC (Area under the curve))との相関性を明らかにした。本年度は、胃癌に対するCPT-11のiMRDと、CPT-11の代謝酵素の一つであるUGTIA1のSNPであるUGTIA1^*28との関係を検討した。まずCPT-11のiMRDは、推奨用量が125mg/m^2とされているが、我々の検討から、25mg/m^2まで下降する症例も少なからず存在し、個人差は5倍あることが判明した。その結果、iMRDが100mg/m^2以上の5例にはSNPの存在を認めなかったが、iMRDが50mg/m2以下の5例中2例にUGTIA1^*28のヘテロが存在する事が判明した。以上より、我々の開発したiMRD法は、代謝酵素のSNPからも妥当性が確認されると同時に、5例中2例でしか説明できなかったことから、一代謝酵素のSNPで、iMRDひいてはtailored dose化学療法に応用することは難しいことが示唆された。今後は、複数の代謝酵素あるいはそのSNPを組み合わせて検討すべきと思われる。また一方で、tailored dose化学療法においては、iMRD法が簡便かつ論理的であることも示されたものと思われる。
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Cancer Research 66
ページ: 276-280
Deseases of Colon and Rectum (印刷中)