胃癌におけるアンギオテンシン1型受容体についての検討 In vitroにおいてヒト胃癌細胞株5株中4株にアンギオテンシン1型受容体(AT1)が発現しており、アンギオテンシン1の添加によりその増殖率は亢進した。また、この増殖率亢進はAT1の拮抗剤であるcandesartanにより抑制された。このAT1を介した増殖率元進の機序は、ERKのリン酸化に伴う増殖シグナルおよびNF-kBの活性化に伴うsurvivinの誘導による抗アポトーシス効果であることを証明した。 ヌードマウスに高度腹膜転移株OCUM-2MD3を1x107個腹腔内投与したところ、移植4週目には癌性腹水を伴う腹膜播種が形成されたが、組織学的には腫瘍の線維化はそれほど顕著ではなかった。そこで、AT1を介した臓器の線維化についての検討は断念し、AT1を介した腫瘍増殖能元進についてin vivoで検討した。移植1週間後からcandesartan 10mg/kgを連日経口投与した群はコントロール群と比較し、有意に生存率の延長を認めた。 臨床検体においても胃癌細胞および周囲間質の線維芽細胞にAT1の発現を高率に認め(70%)、また、癌先進部の間質にはアンギオテンシノーゲンをアンギオテンシンIIに変換するトリプターゼを分泌する肥満細胞が多数存在することを証明した。 以上より、胃癌の増殖および線維化にはAT1を介する経路が存在し、その拮抗剤であるcandesartan(プロプレス:降圧剤)をもちいた分子標的治療の可能性が示された。
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