癌の発生、進展には遺伝子配列の変化を伴う遺伝子異常(genetic alteration)とDNAメチル化のような遺伝子配列の変化を伴わない遺伝子修飾の異常(epigenetic alteration)が共に重要な役割を演じている。これらの遺伝子異常が胃癌、大腸癌の発癌過程においてどのように関わっているかを明らかにするため、遺伝子異常、遺伝子修飾異常に伴うゲノムのダメージの程度をゲノム全域にわたり網羅的に捕捉し、検討した。遺伝子異常の検出にはArbitrarily primed PCR(AP-PCR)法を用いGenetic damage fraction(GDF)を算出し、遺伝子修飾異常の検出にはmethylation sensitive amprified fragment length polymorphysm(MS-AFLP)法を用いてEpigenetic damage fraction(EDF)を算出した。EDFはDNAのメチル化異常を検討し、メチル化、脱メチル化の別にH-EDF、L-EDFを算出した。GDFは年齢との相関はなかったがEDFは年齢に相関し加齢とともに増加した。GDF、EDFともに予後との相関を認めたが、GDFに強い相関を認めた。GDFとEDFは相関したが、多変量解析では特にL-EDF、脱メチル化の程度が優位に相関していた。以上の結果により、加齢とともに進行するゲノム全域の脱メチル化はゲノムの不安定性を引き起こし癌化に深く関わっていることが推測された。
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