1型糖尿病や症状の進行した2型糖尿病では生命維持のためにインスリン注射が絶対的適応となる。ドナー不足を解消するため、インスリン産生細胞を幹細胞から分化誘導する再生医学が注目されているが、現在までのところ、qualityの面から十分な細胞はできていない。今回、膵組織幹細胞の分離・同定を目的とした研究をおこなった。 平成17年度は、マウス膵組織からviabilityを保ちながらsingle cellにする方法を確立した。幹細胞のマーカーと考える表面マーカーを組み合わせてFACSやMACSを用いて、未分化で増殖能の高い上皮系細胞を分離した。さらに、クローナルな解析のためeGFP transgenic mice(green mice)を用いてsingle cell analysisをおこなったところ、RT-PCRでPdx1陽性、insulin陽性細胞へと分化するクローンが存在した。しかし、多くのクローンはBrdU陽性の増殖能の高い細胞だったが、これらはcytokeratin陽性、内分泌ホルモン陰性細胞であった。このクローンをインスリン産生細胞へと効率よく分化させるため、培地や成長因子の組み合わせを現在、試行中である。 また、cellsortingした細胞群をヌードマウスに移植すると、一週間後に、insulin、non-insulinなどの内分泌ホルモンのマーカーと共に、外分泌のマーカーであるamylaseへ分化することを免疫組織染色で確認した。コントロールの細胞移植群では分化を認めなかった。以上より、今回分離した細胞群は未だheterogenousな細胞群であるが、膵組織幹細胞を含んでいることが判明した。 また、この研究計画は糖尿病治療のための膵再生医学を目的としており、ヒト膵組織からの膵組織幹細胞の分離のため、学内倫理委員会の審査のもと、研究計画が承認された。
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