昨年度の研究で、HLA-A2/A24の健常人末梢血から未熟樹状細胞を誘導し、hTERT遺伝子発現プラスミドをリポフェクタミンあるいはエレクトロポレーションを用いて導入しようと試みたが、安定導入株を樹立することはできなかった。そこで、hTERT遺伝子発現に加えて、ヒトパピローマウイルスのE6/E7遺伝子を追加導入することで樹状細胞のクローン化を目指した。HLA-A2/A24の未熟樹状細胞にE6/E7遺伝子発現レトロウイルスおよびhTERT遺伝子発現レトロウイルス(国立がんセンター研究所清野博士から供与)を感染させ、ネオマイシン・アナログのG418でselectionを行った。しかし、やはり安定導入株は得られず、不死化樹状細胞を樹立する本研究の継続は困難と判断した。 本年度後半は研究の方向性を変更し、テロメラーゼ活性を標的とした腫瘍融解ウイルスで細胞死を誘導した癌細胞を樹状細胞にパルスすることで、癌細胞に特異的な細胞障害性T細胞(cytotoxici T-lymphocytes ; CTL)が誘導可能か否かを検討した。ヒト癌細胞にナノバイオ・ウイルス製剤Telomelysin(テロメラーゼ・プロモーターでウイルス増殖に必要なE1遺伝子を制御する腫瘍融解アデノウイルス製剤)をH1299ヒト癌細胞に感染させ、免疫を活性化するdanger signalとして知られる細胞内尿酸の濃度を測定したところ、著明な上昇を確認することができた。Telomelysinを感染させたH1299細胞と健常人末梢血を混合培養し、7日後の細胞の癌細胞に対する細胞障害活性を検討したところ、H1299細胞に特異的なCTL誘導が確認された。
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