肝細胞癌(HCC)の進展(=脱分化)・血管浸潤(=転移形質の獲得)におけるID2の機能的役割を検討した。 (1)HCC細胞株における分化度とID2発現の関係をmRNAとタンパクレベルの両方で検討した。 (2)ID2の発現が低く、低分化な細胞株を用いて、ID2の遺伝子移入実験を行い、トランスフェクタントのフェノタイプ(分化マーカー・浸潤能力など)の変化を比較検討した結果、ID2過剰発現により、肝癌細胞株の浸潤能力の低下を認めた。また、この浸潤能力の低下にはID2を介したマトリックスメタロプロテナーゼ(MMPs)の発現制御が関わっていることが判明した。 上記(1)と(2)の結果をまとめ、第64回日本癌学会学術総会、第97回AACRで発表し、現在、関連論文を国際論文に提出中である。 また、上述したようにID2は転写因子であるため、その下流にどのような遺伝子がリストされるのか、あるいは変化したフェノタイプにどのような遺伝子が関与するのかをDNAマイクロアレイにて解析しており、ID2下流遺伝子の同定作業を行っている(未発表)。また、肝癌の遺伝子およびタンパク解析を中心とした関連研究を国際論文(5報)にて発表した。
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