研究概要 |
(目的) 大腸癌における肝転移は重要な予後規定因子であり、そのメカニズム解明により宿主の肝転移高危険群の予測や、免疫強化療法に直結する可能性がある。今回、大腸癌肝転移モデルで、肝転移成立におけるCD4+CD25+Foxp3+Tcell (regulatory T cell、以下reg T)の活性を含めた免疫機構について検討した。 (検討項目) 1.肝転移モデルの作成と高肝転移株と低肝転移株の識別 2.肝転移モデルの末梢リンパ球と肝還流液中自由リンパ球中のregT数とNK細胞数のFACSでの計測 (結果) 1.転移能を有するマウス大腸癌細胞株colon26をBalb/cマウスの脾臓内に注入し肝転移モデルを作成した。高転移株と低転移株の樹立は困難であったが、colon26の脾注後に脾摘を行うと有意に肝転移個数が増加した(脾摘群vs脾温存群:pく0.01)。 2.脾摘群は、colon26をBalb/cマウスの脾臓に1×10^6個/0.1mlを移植、4日後に脾摘、脾注後7,10日目に犠死させた。脾温存群は、脾摘をせずにcolon26脾注後7、10日目に犠死させた。末梢リンパ節中のNK細胞は脾摘群で7,10日目いずれでも有意に高値を示した(Pく0.01)。reg T数は2群間で有意な変化を認めなかった。 3.colon26の脾注を行わずに、脾摘の免疫系に及ぼす影響についてNK細胞数とregT数を測定すると、脾摘群では脾温存群に比べて両者とも有意に低値を示した(pく0.05)。 4.肝自由リンパ球で同様にNK細胞数とreg T数の測定を行ったが、リンパ球分画が不明確で測定困難であった。 5.直腸同所性モデルを作成、肝転移成立に関してMMP等、転移に関する因子を検討中。 (まとめ) 脾摘により肝転移が増強した。末梢リンパ球中のreg Tが肝転移成立に及ぼす影響は低く、NK細胞の低下が肝転移増強に影響する可能性が示唆された。
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