研究概要 |
胆管癌は化学療法や放射線療法の効果が乏しいため、根治手術が不可能な場合は予後不良である。 我々は、ヒト胆管癌細胞株HuCCT1に対して,大腸菌のuracil phoshoribosiltransferase (UPRT)遺伝子とHerpes simplex virus-1 thymidine kinase (HSV-tk)遺伝子を組み込んだアデノウィルスベクターAxCAUTを作製し、5-fluorouracil (5-FU)、ganciclovir (GCV)の抗腫瘍効果を培養細胞系と動物モデルで検討した。さらにE1B-55kDを欠損した腫瘍選択的増殖型ウィルスに、両遺伝子を組み込んだAxE1CAUTを用いて抗腫瘍効果を検討した。 培養胆管癌細胞において、5-FU、GCVの薬剤感受性は、アデノウィルスAxCAUTのmultiplicity of infection (MOI)数が増加するに伴い増強していた。さらに5-FU、GCVは単独投与よりも併用投与で、より薬剤感受性が増加していた。腫瘍選択的増殖型ウィルスAxE1CAUTはMOI数の増加に伴い抗腫瘍効果を示した。 アデノウィルスAxCAUTを投与されたマウス皮下担癌モデルにおいても、5-FU、GCVは単独投与群と比較して併用投与で抗腫瘍効果を示した。さらに腹膜播種モデルにおいて、AxE1CAUT投与群はAxCAUT投与群に比べ有意に生存率を延長させた。 胆管癌に対する自殺遺伝子療法は、UPRT/5-FU、HSVtk/GCVを組み合わせることにより、より有効な治療となる可能性が示された。さらに腫瘍選択的増殖型アデノウィルスベクターに2種類の自殺遺伝子を組み込んだAxE1CAUTを用いると、ウィルス自体の腫瘍融解作用に加えて、薬剤感受性遺伝子を発現させることにより強力な抗腫瘍効果を示した。
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