研究概要 |
1.分子遺伝学的な肝障害度評価 現時点で合計121例の解析をオリゴアレイにて実施した。Azan染色による肝線維化率(MFI)の測定には十分な非癌部切除例に限られるため測定可能であったのは、合計81例であった。 2.B型慢性肝炎、C型慢性肝炎の比較 C型で多く発現する遺伝子の多くはInterferon関連分子やImmune functionに関与するものであった。リストの上位に位置するGlP2やIFI27はHCV陽性肝細胞癌の癌部にて高発現する遺伝子であった。これらの遺伝子リストはB型、C型の違いにより同定した者であるが、多くの遺伝子はC型とそれ以外に分かれ、NBNC型はB型に類似していた。 3.極細肝生検針による評価の再現性の確認と更なる細径化 肝生検針(ACECUT)を用いて、18G:30.4±4,4μg、20G:15.3±1.4μgのtotal RNAを採取可能であり、同一症例での解析結果は同じクラスターに分類されることを示した。また、肝生検針を用いて、22G:4.9±0.9μg、23G:3.4±0.5μgのtotal RNAを採取可能であることが確認でき、全体でクラスター解析すると同一症例からの切除組織と肝生検組織は同じクラスターに分類された。 4.最終的な遺伝子の絞り込み 上記の結果より、B型とC型肝炎の遺伝子発現の違いが明かとなったため肝障害の程度を評価するにもB型とC型は別々に評価すべきと考えられる。そこでまず、C型肝炎症例に絞って肝繊維化率と遺伝子発現の関連を解析した。現時点でtraining sample (n=30)でR=0.86、test sample (n=7)でR=0.82とよい結果を得ている。 5.極細肝生検針よりえられた74症例からの標本を用いてマイクロアレイを行い、最終的に39遺伝子を同定した。その中でMHC-class II関連遺伝子が最も有効に炎症状態を反映した。また、PIK3C2B、ARHGDIBなどの幹細胞の活性化を司る遺伝子も含まれており、これらが肝炎の分子病因予測因子となる可能性が示された。
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