研究概要 |
【研究の目的】大腸癌に対する腹腔鏡下手術は国内外で急速に普及しており、その適応は悪性腫瘍まで拡大されつつあるが、進行結腸癌あるいは直腸癌に対する安全性、長期成績については明らかにされていない。本研究では、腹腔鏡下手術の有用性評価の臨床試験を実施し、標準治療としての位置づけを明確化する。 【対象と方法】 A,進行結腸癌に対する第III相臨床試験の実施 (1)症例の選択:結腸癌の深達度T4まで(Siを除く)の進行癌を対象。 (2)プロトコール治療:D2あるいはD3郭清を伴う腹腔鏡下あるいは開腹手術(根治手術) (3)評価項目:(a)短期成績:血液生化学検査、手術時間、出血量、排ガスまでの日数、術後在院日数有害事象発生割合、腹腔鏡下手術の開腹移行割合(b)長期成績:全生存期間、無再発生存期間 B,直腸癌に対する第II相臨床試験の計画および実施 (1)症例の選択:上部直腸ではT4まで、下部直腸ではT2まで (2)プロトコール治療:腹腔鏡下手術(腹腔内吻合、郭清度は進行度に応じてD1-D3) (3)評価項目:血液生化学検査、手術時間、出血量、術後在院日数、有害事象発生割合、開腹移行割合 【結果】<A,進行結腸癌に対する第III相臨床試験>結腸癌32例を登録した。短期成績では、手術時間(252vs.210分)は有意に腹腔鏡下手術が長く、出血量(68vs.123ml)、術後在院日数(13.5vs.15.8日)は有意に腹腔鏡下手術が低値であった。他の因子は有意な差を認めず。長期成績では、平均経過観察期間が16.4ケ月と短期間ではあるが、再発は開腹手術の1例にのみ認め、全例生存中である。<B,直腸癌に対する第II相臨床試験>直腸癌16例を登録した。上部直腸10例、下部直腸6例で、開腹移行例は認めず。合併症は、吻合部出血1例、創感染2例。平均観察期間12.1ケ月において再発例はなく、全例生存中である。 【結語】進行結腸癌および直腸癌における腹腔鏡下手術は安全であり短期成績は良好である。標準治療としての有用性の評価のために、さらなる長期成績の評価が必要である。
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