研究課題
基盤研究(C)
浸潤・転移能の異なるヒト膵癌細胞株6種類からmRNAを抽出し、thrombinのreceptorであるPAR-1 mRNAの発現をRT-PCR法で調べたところ、全ての膵癌細胞株でPAR-1の発現を認めた。Thrombinの添加により、ほとんどの細胞株の増殖が促進された。Thrombin刺激でのG1→S期移行に関わるPAR-1下流の遺伝子の発現を調べると、cyclin D3のup-regulationが関与していることが示唆された。膵癌細胞の細胞外基質への接着能に対するthrombinの作用を調べた。転移能の高い細胞株ほど細胞外基質への接着が良好であるという傾向が見られた。Thrombin刺激による膵癌細胞の細胞外基質への接着能と膵癌細胞の転移能との間に相関は認められなかった。Thrombin刺激により細胞外基質の中でVitronectin、Fibronectinへの膵癌細胞の接着が亢進した。膵癌細胞のVitronectinへの接着はPAR-1 agonistであるTRAP-6の刺激で亢進した。一方、thrombinによる接着亢進作用はPAR-1 antagonistであるSCH79797で抑制された。膵癌細胞の細胞外基質への接着はthrombin-PAR-1系が関与していると考えられた。Thrombinによる膵癌細胞の細胞外基質への接着反応に細胞接着分子であるIntegrinが関わっているのかについて調べた。Integrinのサブユニットであるαvβ3、αvβ5、β1の中和抗体を用いて、Thrombin刺激による膵癌細胞のVitronectinへの接着亢進が抑制されるかを調べると、抗Integrinβ1にて抑制された。Vitronectinへの接着亢進は、Integrin αvβ1-dependentであると考えられた。
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Hepato-Gastroenterology (in press)