研究課題
アデノウイルスベクターを用いた癌の遺伝子治療を行なう上での最大の問題点は、選択的な遺伝子導入が効率よく出来ないことである。その原因は、アデノウイルスのレセプターであるCARが正常細胞にも大量に発現していることに起因する。アデノウイルスベクターによる選択的ながん細胞への遺伝子導入を行なうために、我々は5型アデノウイルスのファイバーノブHI loopに、Staphylococcus protein A由来の33アミノ酸よりなるIgG結合ドメインを有する改変型ベクター(Adv-FZ33)を作製した。Adv-FZ33は細胞表面抗原に対する抗体を介し感染しうるものである。本実験では我々は、癌標的分子としてCEAに注目し、臨床応用に適している完全ヒト型抗CEA抗体であるC2-45(IgG4,κ)と結合したAdv-FZ33をCEA産生胃癌細胞株へ遺伝子導入を試みた。C2-45と結合したlacZまたはEGFPをコードするAdv-FZ33を感染させると、コントロールヒト抗体(IgG4)と結合させたものと比べ20倍の遺伝子発現が得られた。次にE-coli由来UPRT遺伝子を組み込んだAx3CAUP-FZ33を作成し、C2-45と組み合わせることにより5FUの感受性の変化を検討した。UPRTは5-fluorodeoxyuridine monophosphateを増量させThymidylate Synthetaseを抑制し5FUの抗腫瘍効果を増強する。C2-45を介し遺伝子導入行なった群の5FUの感受性は、コントロールIgG4群に比べが10倍増加した(IC_<50>での比較)。さらにヌードマウスを用いた胃癌播種モデルでの治療実験を行った。C2-45と結合したAx3CAUP-FZ33の腹腔内投与群はコントロール抗体群に比べ5FUによる治療効果が優れていることがわかった。さらに同モデルにおいてC2-45を介したAx3CAUP-FZ33投与群での生存率は5FU単独投与群に比べ優位に改善した。ヒト抗CEAを介した改変型ベクターAdv-FZ33による遺伝子治療はCEA産生癌の治療に有望であることが推察された。
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