研究概要 |
H17年度では,5型アデノウイルスのファイバーノブのHI-loopに,Staphylococcus protein A由来の33アミノ酸よりなるIgG結合ドメインを有する改変型ベクター(Adv-FZ33)を作製し,癌標的分子として完全ヒト型抗CEA抗体であるC2-45(IgG4,κ)と結合したAdv-FZ33をCEA産生胃癌細胞株へ遺伝子導入を試みた.この実験で,C2-45と結合したlacZまたはEGFPをコードするAdv-FZ33を感染させると,コントロールヒト抗体(IgG4)と結合させたものと比べ20倍の遺伝子発現が得られた.H18年度は,イムノグロブリンのサブクラスと遺伝子導入効率の関係を解析するため,BIAcoreを用いて、Protein Aをセンサーチップ(CM5)にアミンカップリング法にて固定し,サブクラスの違うマウス抗CEA抗体とヒト型抗CEA抗体とのprotein Aに対する親和性の比較測定を行った.マウスのIgG1はprotein Aに対するaffinity constant(KA)値が非常に悪く,ヒトのG1と比べると1,000倍から10,000倍も劣ることがわかった.それに対して、マウスのサブクラスIgG2a、IgG3の親和性は良い結果であったが、ヒト型抗体のIgG1やIgG4は更に親和性が10倍以上高く,Protein Aの親和性に比例し,遺伝子導入効率上昇した.Adv-FZ33による抗体依存的な遺伝子導入を試みる場合,protein Aとの親和性が高い抗体が,遺伝子の発現を増加出来る傾向であった.以上より,更なる効率の良いCEA依存的な遺伝子導入を目指すため,C2-45のFc部位とCEAに対する結合力がC2-45より高いマウス抗体クローンを用いて,マウス抗体のFv領域をクローニングして、キメラ抗体を現在作製中である.
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