研究概要 |
本研究では,5型アデノウイルスのファイバーのノブにイムノグロブリンFc領域に対するプロテインA結合モチーフを組み込んだベクター(Adv-FZ33)を作製し,がん細胞への抗体依存的な遺伝子導入が可能であるか検討を試みたものである.H17年度はLacZなどのレポーター遺伝子を発現するAdv-FZ33を用い,癌胎児性抗原(CEA)を標的として,抗CEA抗体依存的な遺伝子導入が可能か細胞培養系と動物実験系で検討した.抗CEA抗体と結合したAdv-FZ33をCEA発現培養がん細胞に感染させると,コントロール抗体群と比べ,約20倍強い遺伝子発現が得られた.また消化器癌のKeyドラッグである5-FUの感受性を増強させる遺伝子であるUPRTを組み込んだAdv-FZ33を用い,CEA特異的5-FU治療を培養系とマウス腹膜転移モデルで行った.抗CEA抗体を介し遺伝子導入行なった群の5FUの感受性は、コントロール群に比べが10倍増加した(IC_<50>での比較).播種モデルでの治療実験では,抗CEA抗体群はコントロール抗体群に比べ,生存率の上昇が認められた. H18年度は,イムノグロブリンのサブクラスと遺伝子導入効率の関係を解析するため,抗CEA抗体とプロテインAとの親和性の比較測定をBIAcoreを用いて行った.マウスのIgG1はプロテインAに対するaffinity constant(KA)値が非常に悪く,ヒトのG1と比べると1,000倍から10,000倍も劣ることがわかった.それに対して、マウスのサブクラスIgG2a、IgG3の親和性は良い結果であったが、ヒト型抗体のIgG1やIgG4は更に親和性が10倍以上高く,プロテインAの親和性に比例し,遺伝子導入効率上昇した.Adv-FZ33による抗体依存的な遺伝子導入を試みる場合,プロテインAとの親和性が高い抗体が,遺伝子の発現を増加出来る傾向であった.
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