膵癌の術前診断に核磁気共鳴画像(MRDが応用されているが、癌病巣の明確な描出による質的診断能は充分でない。近年、MRIの造影剤として常磁性金属イオンGd3+やFe3+の化合物が開発され、肝臓の網内系組織に取り込まれる性質を応用して肝臓の腫瘍の鑑別診断に用いられている。しかし、従来の造影剤は癌病巣に特異的(能動的)に取り込れないため、膵癌診断のための造影剤としては応用できない。もし、膵癌に特異的に集積する常磁性金属イオンを用いた造影剤が開発されれば、MRIの磁場の中で高い磁化率を示すためT1やT2強調画像で著しい信号強度の変化を発することにより、膵癌組織と他の組織とは明確に区別できる。 NHS-ビオチンとキメラ化A7Fab分画とを4℃で90分反応させた後、さらに室温で30分反応させてビオチン化キメラ化A7-Fab分画を作成した。 Gd^<3+>はキレート化すると毒性が著しく軽減されるため、ビオチン化キメラ化A7-Fab分画とGd^<3+>との結合にはキレート剤を用いた。ビオチン化キメラ化A7-Fab分画とキレート剤DTPAとをcyclic DTPA法で結合後に、G-25カラムでゲル濾過してビオチン化キメラ化A7-Fab分画とDTPAの結合物を精製した。DTPA結合ビオチン化キメラ化A7-Fab分画にGd^<3+>を加えた後にG-25でゲル濾過して、Gd^<3+>標識ビオチン化キメラ化A7-Fab分画を作成した。Gd^<3+>標識ビオチン化キメラ化A7-Fab分画の抗体活性をヒト膵癌培養細胞株HPC-YSを用いてbinding inhibition assayで測定し、抗体活性が保持されていることを確認した。Gd^<3+>標識ビオチン化キメラ化A7-Fab分画はヒト血清中でも7日間安定であることを確認した。
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