研究課題/領域番号 |
17591431
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
久保 正二 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (80221224)
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研究分担者 |
西口 修平 兵庫医科大学, 肝胆膵内科学, 教授 (10192246)
田中 宏 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (90275256)
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キーワード | 肝細胞癌 / B型肝炎ウィルス遺伝子 / C型肝炎ウィルス / 胆管細胞癌 / hepatic progenitor cell / DNAメチル化 / HMGA2 / インターフェロン |
研究概要 |
(1)B型肝炎ウィルス(HBV)による発癌には、HBVがコードする蛋白、特にHBV-X蛋白による発癌とHBV DNAのヒトゲノムへの組み込みによる発癌がある。肝細胞癌の癌部よりDNAを抽出し、カセットライゲーション法によりHBV DNAの組み込みを検討し、HBV DNAに連続する塩基配列とヒトゲノムのホモロジーを検索した。その結果、組み込まれたヒトゲノム配列の染色体位置は1p、1q、2p、2q、3q、5p、6p、6q、7p、7q、10q、13p、13q、17q、19q、20qであり、組み込まれた近傍には24個の蛋白をコードする遺伝子が存在した。また、一部症例ではMLL2遺伝子座にHBV DNAの組み込みがみられた。したがって、HBV DNAの組み込みが肝発癌の重要な要因にある症例が存在することが予測されるとともに、B型肝癌では個々の症例、腫瘍における特性を解析する必要があることが判明した。 (2)胎生期細胞の成長に関与するhigh mobility group A2(HMGA2)は種々の癌細胞において発現されるが、肝細胞癌細胞と非癌部肝組織におけるHMGA2発現とその変化についてRT-PCRを用いて検討した。その結果、肝細胞癌のうち約1/3の症例において、HMGA2の発現がみられ、その発現頻度は分化度が低下するほど増加した。また、HMGA2の変異も低分化型肝癌において高頻度であった。したがって、HMGA2の発現や変異は肝細胞癌の脱分化や進展に関与していることが示唆された。 (3)肝細胞癌症例における血清中cytokeratin-19 fragment(CYFRA21-1)濃度を測定したところ、血清中CYFRA21-1陽性例では門脈侵襲の頻度が高く、腫瘍径とも関連していた。しかし、分化度との関係はみられず、hepatic progenitor cellからの肝細胞癌発癌や進展との関係は明らかではなかった。 (4)C型肝炎関連肝細胞癌切除例における術後長期成績を見ると、インターフェロン治療歴を有する症例で、特にsustained viral responseやbiochemical remissionが得られた症例での成績は極めて良好で、インターフェロン治療は再発抑制のみならず、肝機能を維持ないし改善し、たとえ再発をきたしてもより根治的な治療が可能となるため、肝細胞癌切除成績が向上すると考えられた。なお、これらの肝細胞癌症例における死因の検討から、インターフェロン治療は肝臓関連死亡を減少させることが明らかとなった。
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