Laser-Doppler flowmetry法に基ずく組織血流量計にて食道癌手術時の再建胃管組織血流量を測定し、胃管吻合部の縫合部組織血流量を最低でも10ml/min/100g以上に保つ必要があると報告してきた。血管作動性物質であるPGE1は抹消血管を拡張し阻血部の血流を改善すると報告されているが、速やかに肺で失活されるため長期間の持続投与が必要となる。一方、lipo-PGE1は、レシチンでおおわれた直径約0.2μmの脂肪微粒子中にPGE1を封入したリポ製剤であり、肺での失活を軽減し担体となった脂肪粒子が障害血管壁に集積する作用のため1日1回の静注で作用としては十分であるといわれている。これら、PGE1やlipo-PGE1の投与により阻血部での組織血流量の増加が認められ、lipo-PGE1でその作用は投与終了10分後でも持続する事を既に報告してきたが、今回、lipo-PGE1の一回投与の効果の持続時間についての胃管の血流モデルを用いた動物実験で行ったので報告する。【対象と方法】ブタ10匹を全身麻酔下に開腹し大弯側胃管を作製する。組織血流計を用いて同社のS型プローブを直接胃管の奨膜面に接触させ、胃管先端から4cmの部位の組織血液量を阻血部として測定する。PGE1とlipo-PGE1をそれぞれ0.05μg/kg/minで10分間の投与を行い、投与前、投与中、投与終了投与終了10、20、30、40、50、60分後に血流量を測定した。【結果】PGE1群とlipo-PGE1群の薬剤投与前血流量は、それぞれ7.6±0.5ml、8.1±1.0mlと有意な差はなかった。薬剤投与中は、それぞれ13.0±1.3ml、13.5±1.4mlと有意に増加した(p<0.01)が、両群間に有意な差はなかった。しかし、投与終了10分後では、PGE1群は8.1±1.1mlと有意に減少した(p<0.01)のに比較して、lipo-PGE1群では13.0±1.3mlと増加したままであった。また、以後徐々に低下したが60分後にも10.2±1.0mlと投与前と比較し有意に増加したままであった(p<0.05)。【まとめ】血管作動性物質であるPGE1やlipo-PGE1の投与により阻血部での組織血流量の有意な増加が認められた。PGE1群は投与終了10分後で有意に血流量が減少したが、lipo-PGE1群では、その作用は投与終了60分後にもある程度持続していた。胃管吻合部の縫合部組織血流量が10ml/min/100g以下の症例に対して、lipo-PGE1の間歇的投与により縫合不全を減少させ得る可能性が示唆された。
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