研究概要 |
(1)核酸代謝酵素mRNA発現の検討 5-FU系抗癌剤の効果と副作用に密接に関連している核酸関連酵素(TS, DPD, OPRT, TP)の各mRNAの発現を,治療開始前および化学放射線治療開始1週間後の生検標本,および手術標本のパラフィン包埋標本からレーザー光を用いて腫瘍組織を選択的に切り出して測定した.その結果放射線照射にUFTを併用した22例では,TS, DPD, OPRT, TPのmRNA発現には有意の変動は認められなかったが,UFT+CPT-11を併用した23例では,治療開始前に比し治療開始1週間後にはTS, DPD, OPRT, TPのmRNA発現はいずれも有意に増加し,化学放射線治療後2週間後の手術時にはいずれも低下した. (2)免疫組織化学での検討 術前に放射線のみで治療した場合には,P53染色陰性,P21染色陽性,apoptosis陽性例で腫瘍縮小率が有意に高率で,これらは高感受性因子と考えられた.UFTを用いた放射線化学療法ではapoptosis陽性が,UFT+CPT-11を併用した放射線化学療法ではapoptosis陽性に加えてP21染色陽性が高感受性因子であり,併用する化学療法レジメンにより差が認められた. (3)併用する5-FU系抗癌剤の投与方法に関する実験的検討 ヌードマウス下肢に移植されたヒト結腸癌細胞株KM20CにTS-1(FTとして8mg/kg)を14日間連日経口投与した。さらに実験1日目のS-1投与45分後に5Gyを腫瘍局所に照射した。5-FUの抗腫瘍効果発現に関する酵素(TP, DPD, UP, OPRT, TS, TK, RNR)を経時的に測定し、TSについてはTS inhibition rate(TSIR)を算出した。治療期間中に大きな活性変動が観察された5-FU代謝酵素は、TPであった。TPの酵素活性は照射後徐々に上昇し実験10日目に最高値を示した。DPDおよびTKは治療期間中ほとんど変動が観察されなかった。OPRTとRNRはそれぞれS-1/5Gy群、S-1群とS-1/5Gy群で経時的に酵素活性の減少が観察された。
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