研究概要 |
(1)術前放射線/化学放射線治療の効果と予後の検討 1991年以降,術前に放射線/化学放射線治療を行い,2週間後に手術を行った144例の患者の切除標本における組織学的な効果を,Dworak分類(Dworak O, et al. Int J Colorect Dis 1997:12:19), Tumor Regression Grade : TRG (Mandard AM, et al. Cancer 1994:73:2680),および日本の大腸癌取扱い規約に従って評価した.化学放射線の効果が著明であったDworak分類でGrade 3/4,TRG分類でGrade 1/2,大腸癌取扱い規約でGrade 2/3,および組織学的な効果が腫瘍の面積の90%以上におよぶ症例は各々19例,17例,18例,17例であり,個々の症例に関しては診断基準間で差は見られたが,大部分の症例での評価は,どの診断基準を用いても同じであることが明らかになった.予後を放射線/化学放射線治療の効果別に比較すると,Dworak分類,TRG分類,日本の大腸癌取扱い規約いずれを用いても,組織学的に効果が著明な症例は,それ以外の症例に比し,有意に無再発生存率,生存率が良好であった.再発形式に関しては,局所再発は164例中5例(3%)であり,同期間内に手術のみで治療された中下部直腸腺癌69例での局所再発13例(19%)と比較して有意に低率であった. (2)併用する5-FU系抗癌剤の投与方法に関する実験的検討 ヌードマウス下肢に移植されたヒト結腸癌細胞株KM20CにTS-1(FTとして8mg/kg)を14日間連日経口投与した.TS-1に5Gy1回照射または8Gy分割照射(2Gy/日)を併用した化学放射線療法を施行し腫瘍増殖曲線を求めた.化学療法単独では効果が僅かな低用量(4mg/kg)のTS-1でもTS-1/5Gy治療では腫瘍増殖抑制効果が得られ用量依存的であった.TS-1(4,8mg/kg)併用分割照射ではそれぞれTS-1/5Gy治療を上回る効果が得られたが用量依存性はなく,抗腫瘍効果増加率としては低用量の方が大きかった.TS-1(8mg/kg)/2Gy分割照射では衰弱,体重減少などが観察された.TS-1単独では抗腫瘍効果が小さいが毒性も少ない低用量(4mg/kg)TS-1併用照射において高用量(8mg/kg)TS-1併用照射と同じ増感係数が得られた結果に対する臨床的意義は大きい.
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