食道癌におけるユビキチン結合酵素(E2)の発現とその意義の研究を行い、以下の成果を認めた。 1 食道癌検体の採取 本研究に対し同意の得られた食道癌患者の摘出標本より、癌組織、非癌部食道正常組織を採取し、直ちに-80℃で保存した。また一部は凍結せずTotal RNAを抽出した。 2 イムノブロット解析 採取した検体を抽出後、ユビキチン結合酵素抗体を用いて各試料をイムノブロットにて分析した。まずはユビキチン結合酵素のうちUbc10、Ubc9について癌組織、非癌部食道正常組織での発現の違い、進行度での違いなどを検討した。各種食道癌培養細胞においてもイムノブロットでの検討を行った。 3 免疫組織化学的検討 食道扁平上皮癌101例のホルマリン固定、パラフィン包埋切片を使用し、各症例の癌組織、異形成組織、正常組織に対し抗ユビキチン結合酵素(Ubc9、Ubc10)抗体を用いた免疫組織染色を行い、臨床病理学的因子、予後についての検討を行った。Ubc10の発現については、臨床病理学的因子、予後との相関が有意差をもって認められた。 4 ユビキチン結合酵素mRNAレベルの検討 15検体のmRNAレベルの検討からユビキチン結合発現が食道癌で亢進していることを確認した。 5 siRNAの合成 Ubc10遺伝子に対し、現在4種のsiRNAのカクテルを作成した。このカクテルを用いて細胞へ導入後24時間でUbc10発現レベルが25%以下になるように配列の選定を行っている。
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