研究概要 |
Maf familyはbZip構造を持つ転写因子で、最近Large mafの膵ラ氏島細胞の分化過程での発現および、インスリンやグルカゴン分泌細胞に各mafが特異的に対応する図式が報告され注目されている。しかしながら、in vivoにおける各mafの局在、発現の変化に影響を与える因子などについては不明な点が多い。今回、外因負荷の影響としてラットを用いた膵虚血再還流モデルにおけるlarge mafの発現を検討した。さらに大型哺乳類であるブタで、新生仔および成人ブタ膵での発達上の発現の変化を観察した。ラットの短胃動脈を40分間クランプして虚血負荷とし、その後再還流し、24,48,72時間後の変化をrealtime PCR,特異的抗体を用いたWestern blotting,組織酵素抗体法などにより検討した。ブタmafのsequenceは独自に決定し、特異的primerを作製した。MafA,mafB,c-Mafとも、抑制の後発現の亢進がみられたが、程度、時相には差異があり、また、局在はラ氏島内だけでなく島外にも陽性となる細胞が散見された。 ブタ膵では新生仔でラ氏島形成が十分でなく、mafAがdiffuseに顕著に染色されたが、成人にいたると島形成が明らかになり、各mafがラ氏島内細胞に染色され、発達に伴う変化が観察された。ブタ新生仔膵組織において、各mafにインスリンやグルカゴンとの共染性がそれぞれ観察された。 組織侵襲の際にmafの発現が誘導され、各maf特異的に修復、再生の機構に何らかの形で関わる可能性が示唆され、また、発達段階の分化形成の過程への関与も推測された。特にmafAはβ細胞の最終的な分化に関わる可能性が高く、このような転写因子の発現調節は、細胞の分化、機能、増殖に影響を与え、その操作により、生体内の膵β細胞の分化増殖の修飾の可能性が具体的に示された。
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