研究課題
<目的>病態肝に誘導される一酸化窒素合成酵素(iNOS)はL-アルギニンを基質にして一酸化窒素(NO)を過剰産生し、様々な肝障害およびその保護と言う善悪両面の効果に関与している。HMG(3-hydroxyl-3-methyl-glutaryl)-CoA還元酵素の阻害剤(スタチン)は脂質低下に加えて多面的作用を示す。肝臓ではスタチンがNOの産生を促進することにより、肝硬変患者の肝血管系の抵抗を減少させ肝細胞保護を示す報告がある。我々は肝障害動物モデルを用いたスタチンの効果の実験に先立ち、炎症性サイトカインによる培養肝細胞のiNOS誘導に対するスタチンの効果を明らかにした。<方法>ラット初代培養肝細胞に新規のスタチンであるpitavastatin(Pit、興和)を処理したのち、炎症性サイトカインのインターロイキン-1β(IL-1β)を添加し、経時的にNO、iNOSの誘導、転写因子NF-kBの活性化などを検討した。<結果>PitはIL-1βのNO産生を時間(4-12 hrs)、濃度依存性(10-50μM)に促進させた。Pit(50μM)は最大3-4倍のNO産生の増加を示した。iNOSのmRNAおよびproteinレベルも同様に増加したが、NF-κBやiNOSプロモーターの活性化には影響を与えなかった。しかし、3'UTRの不安定化配列を組み込んだiNOS promoter-luciferase実験では、PitはそのmRNAの安定化活性を増強させた。Actinomycin Dを用いたmRNA合成阻害の実験からもPitはiNOS mRNAの分解を阻害することがわかった。<考察>Pitは肝細胞において炎症性サイトカイン刺激によるiNOS誘導を転写段階で増強した。この効果はiNOSプロモーターの活性化よりもそのmRNAの安定化を促進したためと考えられる。スタチンによるiNOSを介したNO産生増加が様々な障害肝にどのような効果を与えるのかを、今後肝障害動物モデルを用いて追求する。
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