研究課題/領域番号 |
17591447
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
松井 陽一 関西医科大学, 医学部, 助手 (60278637)
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研究分担者 |
海堀 昌樹 関西医科大学, 医学部, 助手 (30333199)
奥村 忠芳 (奥村 忠義) 関西医科大学, 医学部, 助教授 (80113140)
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キーワード | statins / HMG-CoA reductase inhibitor / nitric oxide / inducible nitric oxide synthase / mRNA stabilization / iNOS antisense-transcript / primary cultured hepatocyte |
研究概要 |
<目的>スタチン(3-hydroxyl-3-methyl-glutaryl(HMG)-CoA還元酵素の阻害剤)は本来のコレステロール低下作用に加えて、脂質に無関係に幅広い抗炎症効果を示す。スタチンによる臓器の保護効果は内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)および誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の発現制御を介したNO産生に関連した報告が多い。肝硬変ではスタチンがNOの産生を促進することにより、硬変肝患者の肝血管系の抵抗を減少させ肝細胞保護を示すと考えられる。しかし、eNOSとiNOSのいずれがNO産生の促進に貢献しているかは不明である。我々は肝障害動物モデルを用いたスタチンの効果の実験に先立ち、炎症性サイトカインによりiNOSを誘導した培養肝細胞(in vitro)モデルを用いて、NO産生に対するスタチンの影響を追求した。 <方法>ラット初代培養肝細胞に炎症性サイトカインのインターロイキン-1β(IL-1β)を添加し、新規のスタチンであるpitavastatin(Pit、興和)の影響をiNOSの誘導およびその関連シグナルで検討した。 <結果>前年度にその一部を報告したとおり、PitはIL-1β iNOSのmRNAおよびタンパク質の発現を著しく促進し、その結果NO産生を増加(3-4倍)させた。しかし、IκB/NF-κB経路には影響を与えなかった。iNOSmRNAの3'-untranslated region(3'-UTR)の不安定化配列を組み込んだiNOS promoter-luciferase実験より、PitはそのmRNAの安定化を促進することが示唆された。最近、我々はiNOS mRNAの転写後調節にiNOS mRNAの3'-UTRとその(不)安定化モチーフ(AU-rich element, AUUU(U)A)の結合タンパク質に加えて、iNOS遺伝子のアンチセンス転写物(AST)が関与していることを明らかにした。PitはこのASTレベルをさらに増加させることがわかった。 <考察>Pitは肝細胞において炎症性サイトカイン刺激によるiNOS誘導を増強した。この効果はiNOSプロモーターの活性化よりもASTを介したそのmRNAの安定化を促進したためと考えられる。スタチンによるiNosを介したNO産生の制御と肝障害との関係を動物モデルで追求することがスタチンの治療応用への次の重要な一歩と考える。
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