研究概要 |
肝細胞癌に対する生体肝移植の適応拡大により、肝右葉をグラフトとして用いる成人間生体部分肝移植が急速に普及し、本術式により招来されるドナー・レシピエント双方の肝うっ血の問題が重要視されるようになった。即ち、肝静脈分枝を再建しなければ、肝静脈還流障害により術後グラフト肝機能障害及び再生不良を生ずることが報告され、肝静脈再建の必要性が議論されるに至ったが、その具体的指標やうっ血による再生不良のメカニズムは明らかにされていない。我々は3次元肝切除シミュレーションシステムを用いることにより、肝内脈管の詳細な立体解剖及び変異の把握、正確な切除肝体積及びマージンの予測が可能なことを報告した(HEPATOLOGY, 2005)。今回うっ血による肝再生障害のメカニズムとサイトカインを含むシグナル伝達の変化に関する基礎的研究を、肝うっ血モデルを用いておこなうことを目的とした。肝うっ血モデルにおけるシグナル伝達解析の準備研究として、ラット肝に対する遺伝子導入効率を検討すべく、センダイウイルスの膜融合能を利用したHVJ-liposomeにFITC oligoを封入して肝に導入を行い、Kupffer細胞へ導入されることを確認した。また血清中の炎症性サイトカイン動態解析を急性肝障害モデルで行い、TNF-a, IL-1b, IL-12, IL-18の増加を確認した。さらに臨床的には、肝静脈ドレナージ領域の評価が生体肝移植静脈再建の指標として有用であることを報告した(J HEPATOBILIARY PANCREAT SURG, 2006 ; ADVANCES IN MEDICAL SCIENCES, 2006 ; WORLD J SURG, in press)。今後NF κ B decoy導入による炎症性サイトカイン制御効果の検討を予定している。
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