研究概要 |
最近食生活を含む生活の欧米化が進み、総死亡における心臓病(心筋梗塞)の割合は増加の一途にある。それに従い虚血性心不全の割合も増加傾向にあるが、移植というoptionを持たないわが国においてその加療に難渋することは多い。そのような中で1990年代より出現した再生医療は次世代の治療の担い手として注目されている。今回心筋梗塞後虚血性心筋症で補助人工心臓下にある患者を念頭に置き、心筋に対する平滑筋細胞移植がこのような患者に対しどれくらい有効であるかを小動物実験モデルを用いて明らかにするという実験である。 我々は雌ラットを用いてまず左開胸アプローチにより、冠動脈結紮により心筋梗塞を作成することから実験を開始した。その後エコーで心拡張が認められたところで(約3,4週)その摘出心を同系雌ラットの腹部に移植(異所性心移植)した。同時に同系雄ラットの大動脈より平滑筋細胞を採取し、腹部に移植された梗塞心に平滑筋細胞移植を行った(同時に細胞移植を行わない群も作成した)。この状態の心臓は、empty beatingの梗塞心であり、LVAD中の心臓と酷似している。4週後に腹部に移植された梗塞心を摘出し、心機能をランゲンドルフ回路を用いて測定した。 結果として、ランゲンドルフ回路を用いた実験では、心機能は細胞移植群が有意に良好であり、細胞移植による心移植の回避の可能性を示唆できた。実際の移植細胞の運命においてもY-chromosomeを用いた定量的評価な評価を行い、15%程度の細胞が4週後も生存していることを確認した。また心機能回復のmechanismとして細胞移植群が有意に細小動脈形成に寄与しており、平滑筋細胞の多面的な効果が示唆された。 また臨床においても動物実験の知識と技術を応用し、実際の患者でgraft不可能の領域に自家CD34+cellを注射し、血管新生という面から見た細胞移植の効果を分析している。この実験の動物実験の結果は下記にのべるように2006念にpublishされた。 虚血性心筋症に対し、補助人工心臓植え込みを行うことは欧米ではよく行われており、補助人工心臓は心臓移植への橋渡しといった意味で用いられている。本邦では2007年現在で年2,3例の心臓移植移植が行われているのみで、植え込み型補助人工心臓を施行しても、その大多数で移植を受けられず、destination therapy(死亡まで装着しておく)といった意味合いが非常に強いのが現実である。そのような中で細胞移植は手術中に付帯治療として植え込み型補助人工心臓と同時に行え、治療効果が得られれば補助人工心臓の離脱が可能といった利点があるとこの実験により推測された。
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