研究概要 |
近年の医療技術の進展に伴い,生体材料の研究開発が進み,これらは医療デバイス,又は生体部品の開発製造に生かされている.しかしまだまだ問題点は多い. 人工臓器の中でも必要度が高いものの一つに生体弁がある.異種生体弁は抗凝固薬剤を必要としない利点があり,さらに供給数の制限がないため,多くの患者に使用されている.この異種生体弁は耐久性が低いことが指摘されてきたが,抗石灰化処理法の進歩により,ウシ心膜弁においては約15年の人工弁機能が保証されるところとなった.すなわち,ウシ心膜は十分な力学的強度を有することが推測される.しかしながら,この異種生体弁には人畜感染症の可能性という問題が存在する.弁組織を異種動物より得るため,この問題は常に危惧されるところである. 一方,ヒト心膜を用いた生体弁は,免疫作用による生体材料劣化の程度は有意に少ないが,遠隔期に弁機能不全を認めたと報告されており,ヒト心膜の強度が不足が疑われていた.しかしながら,その強度不足の詳細は不明であった. そこで本研究においては,ヒト,ウシ,ブタにおける心膜の力学試験を実施し,基本力学挙動を比較検討することにより各動物種における心膜組織の機械的特性を調査している.
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