研究概要 |
我々は,低出力体外衝撃波が血管新生を促進し,慢性虚血心の局所心筋血流量と心機能を改善させることを見いだした。本研究は,この低出力体外衝撃波が抗心筋虚血効果を惹起する可能性,すなわち,heat-shock proteinやアデノシン関連物質,抗アポトーシス蛋白等の発現効果を期待して進行している。本年度は家兎の血液交叉灌流モデルを用いて,1)予め施行した低出力体外衝撃波が,障害のない正常心臓の虚血再灌流障害を軽減するか?2)予め施行した低出力体外衝撃波が,急性冠動脈閉塞による心筋梗塞領域を減少させるか?の確認を行った。1)に関しては,低出力体外衝撃波による3日間の治療を行った家兎正常心臓(衝撃波群)と行っていない家兎正常心臓(コントロール群)とを各々,ウイスコンシン大学保存液に単純浸漬保存し,血液交叉灌流workingモデル下に6時間後に再灌流し,再灌流後の心機能をFrank-Starling曲線により比較検討した。左心房圧4mmHg下の衝撃波群の左心室収縮期圧が平均121mmHgに対し,コントロール群が85mmHgであり,衝撃波群が良好な心機能を有する傾向が示された。2)に関しては,低出力体外衝撃波による3日間の治療を行った家兎正常心臓(衝撃波群)と行っていない家兎正常心臓(コントロール群)とを各々,冠動脈枝を結紮することで局所的に急性心筋梗塞を起こし,心筋梗塞巣のarea at riskを比較検討した。衝撃波群の%area at riskの平均値が42%に対し,コントロール群の平均値が46%であり,両群間に差を認めなかった。1)の低出力体外衝撃波の虚血再灌流障害軽減効果の検討は家兎の実験を重ねた後,ブタのモデルによる検討を行う予定である。2)の急性心筋梗塞モデルの検討に関してはブタの実験は行わない予定である。本研究の3番目の課題である3)予め施行した低出力体外衝撃波が,もともと心筋障害を有する心臓の虚血再灌流障害を軽減するか?に関しては来年度,家兎モデルにて検討し,ブタの慢性虚血心モデルに発展させる予定である。
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