研究課題/領域番号 |
17591479
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
川端 徹也 琉球大学, 医学部附属病院, 助手 (30325857)
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研究分担者 |
垣花 学 琉球大学, 医学部, 助教授 (20274897)
大城 匡勝 琉球大学, 医学部附属病院, 助手 (00315483)
笹良 剛史 琉球大学, 医学部附属病院, 助手 (80225903)
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キーワード | 脊髄虚血 / 脊髄機能モニタリング / 対麻痺 |
研究概要 |
胸部下行あるいは胸腹部大動脈手術における脊髄虚血の発生を早期に発見する目的で、脊髄機能モニタリングの技術が発展してきた。当院でも、2000年から脊髄機能モニタリングの一つである、運動誘発電位に取り組んできており、現在では約30例もの症例を成功させてきた。 2000年4月から2005年5月までに行われたTAAにおいてMEPを施行した症例を後ろ向きに検討した。手術室内コンピュータからTAA症例を抽出し、その後麻酔記録と入院診療録を調査し、検討項目を記録した。検討項目は、麻酔方法、麻酔薬使用量、MEP導出成功率、術中MEP低下の有無、MEP低下の原因、術後運動機能とした。 調査期間内で、27例のTAAでMEPモニタリングが行われていた。麻酔方法に関しては、全例でプロポフォール(P)、フェンタニル(F)、ケタミン(K)、を用いた全静脈麻酔であった。筋弛緩薬は、麻酔導入時にスキサメトニウムを使用した症例が21例、ベクロニウム使用が6例であり、麻酔維持では全例ベクロニウムを使用していた。術中ベクロニウムの使用量は、平均8.7mgであった。P投与速度は大動脈遮断後に減少し、平均12mg/kg/hであった。Fの投与量は、平均34.8μg/kgであった。術中MEP導出は、人工心肺送血側下肢において25例で不可能となったが、左下肢では全例で成功した。術中MEPが低下した症例は8例で、その原因として深麻酔が1例、脊髄虚血が7例、血圧低下が3例にみられた。脊髄虚血の7例中2例が術後対麻痺となった。正常運動神経機能の5例はでは、いったん消失したMEPが、肋間動脈再建あるいは肋間動脈灌流により回復したが、対麻痺を来たした2例では、いずれも低下したMEPは術中回復しなかった。 MEPは麻酔薬に影響を受けやすいため、その導出は難しいとされているが、全静脈麻酔により全例導出できた。麻酔管理上の注意点として、大動脈遮断中のPの投与速度に注意することである。筋弛緩薬については、筋弛緩モニターによる筋弛緩程度の把握と術中使用量を最小限にする努力が必要である。MEPが術中低下し回復しなかった症例は術後対麻痺となる可能性が高いと考えられた。
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