研究概要 |
進行胸腺腫(正岡III期以上)に対し、術前ステロイドパルス療法が有効な治療法として確立した。このメカニズムの解析のため17年度の研究で胸腺腫、正常胸腺のin vitroでの培養に成功し、さらにステロイドとの共培養の結果腫瘍縮小のメカニズムを解析することが出来た。このメカニズムはまず腫瘍内のリンパ球がステロイドによりapoptosisとなる。腫瘍細胞内にもステロイドのレセプターが存在することが証明されステロイドにより腫瘍細胞もapoptosisとなることが証明された。しかしリンパ球のほうが感受性がよく、腫瘍細胞のレセプターの数にもばらつきがみられ、これが腫瘍の縮小の程度の差となっていることが判明した。実際臨床でも術前の穿刺細胞診を行い、FACSによりリンパ球を解析するとレセプターを多く発現しているCD4/CD8の分画が多く含む腫瘍ほど、ステロイドの効果は高かったことが証明された。一方抗がん剤の感受性に関しては各種の抗がん剤でin vitroによる解析を行った。使用した抗がん剤は5-fluoroucil(5-FU),cisplatin(CDDP),docertaxel(DOC),carboplatin(CBDCA),paclitaxel(PTX)である。胸腺腫とともに共培養したところ、ある一定の濃度異常で全ての抗がん剤でリンパ球、腫瘍細胞ともにapoptosisとなることが判明した。今後、臨床でのレジメンの決定とステロイドの使用方法が課題である。また術前のニードルバイオプシーを行いFACSで解析できれば、術前療法としてステロイドが有効か、また化学療法が有効であるかを解析することが可能である。
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