我々は、2000年より骨髄間葉系幹細胞による細胞移植で、不全心を再生させれないかというテーマで研究を重ねてきた。本研究における大きなハードルは細胞培養における安全性の確保である。現在までの細胞培養はすべて開放系で行ったものであり、閉鎖系培養系の応用はほとんど検討されていない。本研究を計画するに当たり、MABIO internationalより市販されている最も小ささ閉鎖式細胞培養容器を使用した。細胞は、臨床応用を考えている骨髄間葉系幹細胞で、種はマウスを用い、開放系のものと増殖等の数項目のみ比較検討を行い、同等な結果を得た。 次に、心臓外科手術症例にて、インフォームドコンセントのものに、胸骨切開時に1-2gの骨髄を採取し、開放系細胞培養システムにて、その増殖能・分化能と心不全及び投与薬剤との関係を解析した。項目としては、増殖能・分化能および細胞表面抗原の解析をFluorescent Activated Cell Sorting (FACS)を用いて検討し、症例数は20症例に対して検討を加えた。いずれの項目においても開放系との差異は認められていない。 汚染の危険を高めた条件として、クリーンベンチ外での培養操作を行い、開放系細胞培養法との汚染状況の対比を行ったが、クリーンベンチ外での20回の操作で一例の汚染も検出せず、簡便な操作にて極めて安全な操作であることを確認した。 ここまでの研究結果にて、本学倫理委員会に閉鎖式細胞培養容器使用による、循環器病(重症心不全及び慢性動脈閉塞(閉塞性動脈硬化症、Burger病等))への培養骨髄間葉系幹細胞移植による再生治療の申請を行う予定である。
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